突然、何の前触れもなく、パニック発作(下記の身体症状・精神状態)のうち4つ以上が数分~数十分あらわれ、ほぼ1時間以内に消失します。(DSM-Ⅳによる診断基準)
※お子さんの場合 大人と比べると、泣いたり、叫んだりと劇的であったり、吐き気や便秘が症状になることがあります。
予期不安はパニック発作を経験し、何度も繰り返すうちに「また発作がくるのではないか」と、継続的に不安や恐怖を感じることです。
発症が1回だけでも、予期不安が1か月続く場合は、パニック症(パニック障害)の可能性があります。
広場恐怖とは、パニック発作からくる予期不安がひどくなると、以前に発作が起きた場所や似た状況の場所を避けるようになり、助けがない、逃げられないような場面、場所に対しても強い不安を感じてしまい行けなくなってしまうことです。
一般的にいう「パニック」とは、災害や事故などの非常事態に出会ったときに起きる混乱状態のことで、普段どんなに冷静な人でも、衝撃的な状況に見舞われればパニックに陥り、慌てたり取り乱したりするものです。これに対し「パニック症」は、実際には何も特別な事態が起きていないのに、突然不安に襲われ、胸がドキドキして苦しくなったり、めまいや震えなどの発作(=パニック発作)が出てきたり、日常生活に支障が出る状態を言います。こうした症状をパニック症もしくはパニック障害と呼びます。
一度このパニック発作が出ると、発作が起きていないときでも「またあの発作が起きるのではないか」という不安を常に抱える状態になり、発作の恐怖とともに、発作によって他人に迷惑をかけるのではないか、取り乱して恥をかくのではないか、誰も助けてくれなかったらどうしようといった不安(=予期不安)も抱えることになります。
更に発作の不安が強くなっていくと、不安を感じる場所や似たような状況を避けるために、外出先、交通手段などに制限が出てしまい、社会生活に支障をきたす場合があります(=広場恐怖)。
以前は「不安神経症」の一つの症状とされていましたが、薬による治療が有効なことから、現在では独立した病気として扱われるようになりました。およそ20人に1人がかかる病気といわれていますが、病気だと気付かない人も多く、適切な治療が行われないまま慢性化・重症化してしまうことがあります。パニック症(パニック障害)は早めに適切な治療を開始することで、症状の改善や回復が期待できる病気です。気になる症状がある方は、早めに受診していただくことをお勧めします。
心筋梗塞、狭心症、甲状腺機能亢進症、バセドウ病、機能性低血糖症、喘息、メニエル病、過換気症候群などもパニック症(パニック障害)と似たような症状がでるので注意が必要です。
パニック症(パニック障害)の原因は、脳と脳内の神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリンなど)が関与していると考えられています。
人間の脳細胞では様々な情報や命令を伝える物質が分泌されています。ストレスや過労などが原因で、ノルアドレナリンが増えることで神経が興奮し、強い動悸や呼吸困難が生じます。するとノルアドレナリンを抑えるために、今度はセロトニンが減少します。セロトニンが変動すると、不安や恐怖を過剰に伝えてしまい、結果としてパニック発作につながると考えられています。
直接の原因ではありませんが、パニック症(パニック障害)の患者様に共通する点として、炭酸ガスや乳酸、カフェインなどの摂取により発作が誘発される傾向がみられています。
患者様の中には、発症の数か月前に大きなストレスがかかる出来事があったと言う方もいらっしゃいます。
これらの性格だからと言って、必ずパニック症(パニック障害)になるわけではありません。しかし、怖がりの方はパニック症になりやすいと言われています。
また、パニック症が悪化すると、うつ病などを併発することがありますが、過去にうつ病になったことがある方もパニック症になりやすいと言われています。
パニック症(パニック障害)の治療では、抗うつ薬の服用が有効と言われています。抗うつ薬を服用することで脳内の神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン)のバランスの乱れを調整し、発作を抑制していきます。パニック発作が起きたときの頓服薬として、抗不安薬を使います。
服薬治療を行うと同時に、認知行動療法を行うのも一般的に有効と言われています。
認知行動療法とは、物事の受け取り方、受け取り方の癖を認識し、柔軟な考え方を身につけることで、問題解決を支援する心理療法です。個人差はありますが、症状の緩和に役立つ可能性のある治療法の一つとして、注目されています。
抗うつ剤や抗不安薬の服用で脳内の神経伝達物質のバランスの乱れを調整し、不安や発作が起きにくいようにすることから始めます。発作が起こりにくくなると、苦しい発作を繰り返すのではないかという不安や恐怖を軽くすることが期待できます。
<抗不安薬>
パニック症(パニック障害)の治療では、服薬が有効と言われています。
しかし、抗うつ薬は、すぐに効果が出るものではありません。効果が出るまでは、数週間継続的に服薬する必要があります。
また、その患者様に「合う」薬が見つかるまで、何度か薬を変えたり足したりしなければならないため、長期間薬を飲み続けることになり、不安を感じることもあるでしょう。まずは、病気を治すために薬が必要であることを理解してください。
もし薬の服用で不安や疑問点があるようでしたら、自己判断で中止せずに、まずは担当のドクターに遠慮なく相談してください。
抗うつ薬の服薬により、食欲の減退や眠気、だるさや吐き気を感じることがあります。しかし、副作用は飲むにつれだんだん軽くなる傾向があります。まずは、我慢をできる範囲であれば、継続して服用してみてください。
どんな薬にも、程度の差はありますが、副作用があるものだと理解してください。いかに副作用を少なくし、治療を続けていくかが私たちの役割です。
治療により発作が消失しても、すぐに服薬をやめてしまうと、再発してしまう傾向があります。したがって、発作がなくなっても1~2年間維持療法を続けることが、完治を目指すためにも重要と言われています。
薬で発作を抑える治療を行うと同時に、精神療法のひとつの認知行動療法が有効と言われています。
認知行動療法とは、ストレスなどで偏った「認知」や「行動」を変えていくことで、気持ちや身体を楽にしていく精神療法です。「認知」や「行動」は自分の意志でコントロールしやすいと言われていますが、「気持ち」や「身体」をコントロールすることは難しい傾向にあります。
認知行動療法ではその人の「物事の受け取り方」や「ものの見方」の癖を認識し、柔軟な考え方を身につけることで、問題解決に向けての支援をします。個人差はありますが、症状の緩和に役立つ可能性のある治療法の一つとして、注目されています。
この病気が生命に危険が及ぶようなものではないことを理解し、病気のメカニズムをしっかり認識して発作時に冷静な対処ができるようにします。
パニック発作が起きたときは、落ち着いて深呼吸などをおこない、症状が過ぎるのを待ちましょう。また、対処法を、医師やカウンセラーとあらかじめ相談して決めておくのも、有効と言われています。
症状が落ち着いてきたら少しずつ苦手な場所へ出かけるようにします。電車が苦手な場合なら、最初は家族と一緒に各駅停車に乗り、慣れてきたら一人で乗る、次は急行電車に…という具合です。
当院はさまざまなプログラムもご用意しております。デイ・ナイトケア、思春期ナイトケア、復職のためのリワークプログラムなど、ご自分にあったものをお選びいただけます。
精神的なストレスや身体の疲労、睡眠不足は発作を引き起こす要因となりやすいです。まずは十分休養をとり、規則正しい生活を送ることで心と身体のバランスを整え、発作を起こしにくくしていきましょう。
カフェインは脳を刺激しパニック発作を誘発するため、コーヒーなどを飲んだ後にパニック発作が起きやすくなります。なるべくカフェインを控えるようにしましょう。
<カフェインを多く含む飲み物>
コーヒー、緑茶、紅茶、コーラ、エナジードリンクなど
二酸化炭素もパニック発作の原因の一つと考えられています。体内に二酸化炭素が増えると呼吸が増え、息苦しさから不安になってパニック発作を引き起こします。部屋の換気は時々行い、換気の悪い場所は避けるようにしましょう。
また、炭酸飲料のガスは二酸化炭素が水に溶けた状態ですので、注意が必要です。
発作時に過換気症候群(過呼吸)の発作と間違えて、紙袋で自分の吐いた息を吸わせたりすると発作が増してしまうことがあります。
発作が起きた時に、助けてくれる人がいると思うだけで、患者様は安心感をもつことができます。発作が充分にコントロールされるまでは、患者様の外出にご家族や友人が同伴することは、とても助けになります。
サポートする方は自分だけで行おうと無理をしないでください。パニック症(パニック障害)の治療は長い期間が必要と言われますので、サポートをする方が疲弊してしまいます。そうなると患者様が申し訳ない気持ちになってしまう傾向があります。家族のみなさんで患者様を支えてあげてください。
パニック症(パニック障害)は投薬など、病院(メンタルクリニック)でなければ受けられない治療が必要な病気です。早期に適切な治療を開始することにより、慢性化・重症化を防ぐことにつながる期待ができますので、ぜひ診察にいらしていただきたいと思います。
聞いてもらうだけでも気持ちは楽になると言われています。心療内科や支援施設、まずは家族や友人からでもかまいませんので相談をしてください。